フィリピンでも医者ができるのですか? 

                     
                     フィリピンの憲法には、Profession(国家資格を必要とする専門職)は、
         フィリピン国籍を持つ者に限られると記されています。
         しかし例外規定があります。同国の医師法(The Medical Act 1957)には、
         外国籍の場合は、同人出身国においてフィリピン国籍の者が医師として
         医療業務を行える場合に限り、その者に医師免許を与えると記載があり
         ます。いわゆるGive and take、国の間においては互恵主義(principle of
         reciprocity)と呼ばれるものです。

         幸い我が国では、国籍の如何に関わらず所定の条件を満たした後に医師
         国家試験に合格すれば、医師免許が与えられます。
         私は、このことを証明する書類を苦労して集め、フィリピンで国家資格
         を統括する当局(Professional Regulation Commission:PRC)に提出しま
         した。
         しかし、PRCの回答は、「日本においてフィリピン国籍の者が医師免許を
         取得するのは非常に困難であり、よってReciprocityは成り立っていない」
         という不当なものでした。

         日本人である私がフィリピンの医師国家試験に合格するのと、フィリピン
         人が日本の国家試験に合格するのは、同等に高いハードルです。
         仮に、日本語習得の方が難しいとしても、それは別問題です。
         互恵主義とは、両国の法律が定めている規定が同等かどうかの点です。

         結局、私はその点を争点にフィリピンにおいて裁判を起こしました。

         国を相手の裁判というのは、個人には不利です。
         個人の時間は限られますが、国は時間とは無縁です。
         人は歳を取りますが、国は取りません。
         私は、10年以上を費やして最高裁まで争い、2008年7月18日に勝訴を勝ち
         取りました。

         高裁の判決文

         

         最高裁での勝訴を伝えるニュース記事。英文ですが、興味のある方は
         →コチラをどうぞ。

         当初は、免許を取ったあかつきには、マニラで開業し現地邦人のために
         働きたいと考えていましたが、年月は私に別の働き場所を与えていました。

         日本の産科の現場は医師不足の極みです。
         今日も、日本のどこかに「産めない地域」ができて、妊婦さんがお産難民
         となっています。私は微力ですが、今はそこにいます。

                                                                                 Back