グッド・サマリタン・ロー
(Good Samaritan law)
よきソマリア人法とは、病人や危機に瀕している人を救う為に善意から無償で行った行為に対しては、それが失敗して悪い結果になったとしても、その責任を問われないという趣旨の法律です。

しごく当然と思えるのですが、日本には明文化されたものがありません。
それがないと、どう言った不都合が生じるのでしょうか。

よく引き合いに出されるのが、飛行中の機内におけるドクターコールです。
「お客様の中にお医者さまはいらっしゃいませんか?」という、あれです。
 
私の知り合いに、「あの時にすっくと立ち上がって衆目を集めたい、それだけのために医者になりたい」と言っている奴がいます。
ちなみに彼は他の点では、医者より良い稼ぎをしているし、特に医者に憧れることはないそうです。
 
では、はたして、彼が仮に医師免許を持っていたとして、手を上げることができるでしょうか。

機体は高度3万フィート、巡航速度で飛行していました。
機の後方よりの座席にいた乗客が胸痛を訴えました。
そして、スチュワーデスが、例のアナウンスをしたわけです。
それに応じてビジネスクラスの初老の乗客が名乗りを上げました。
機内には、医療関係者が乗り合わせることを前提にある程度の治療ができる装備が用意されています。
診断に関しては、この場合、胸の痛がる程度、左肩への放散痛、冷や汗などから心筋梗塞を思い浮かべるのは容易でした。
 
しかし、その病は善良な老医師の専門分野ではありませんでした。心筋梗塞など青年研修医であった遠い昔に診た記憶しかありませんでした。毎月送られてくる日本医師会雑誌にあった胸痛の特集記事を思い出しつつ、
できる限りの手当てを施したのですが、不幸にもその乗客は亡くなってしまいました。
 
後日、その医師のもとに送られてきた手紙は、遺族からの感謝のものではなく、適切な処置を誤ったことに対する損害賠償を請求するものでした。
業務上過失致死で刑事告発こそはされなかったが、善意が招いた結果に対して、老医師は心労を強いられることとなったのでした。

実際、現役医師に対して行われたアンケートによると、機内でのドクターコールに応じるかどうかという点について、半数以上が応じられないと回答し、その理由として、結果責任を問われる恐れがあるからと答えています。

善意で行われた行為に損害を求める人間がいるのなら、法律で免責をきちっと規定しておくべきだと思います。

えっ、私ですか。
もちろん、手を上げます。
実際、アラスカ上空で、「ひきつけ」をおこした子供を診たこともありますし、新幹線を緊急停止させたこともあります。
この間は、名阪国道で前方3台の玉突き事故に遭遇し、家族と一緒に緊急処置をしました。

なぜか、いろんな場面に遭遇します。
知らない土地を歩いていても、よく道を訊ねられることと関係があるのでしょうか?
  
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