医療再生の処方箋
医療は、もう崩壊した感があります。
医療過誤を偏った視点から報道しがちであったマスコミの論調も、どうしたら崩壊した医療現場を再生できるかに変わってきました。
最近多く見かける再生の手段として、医師数の増員というものがあります。
医師が増えれば、今の医療現場の問題は解決するのでしょうか?
答えは「No」です。たとえ
一瞬に医師数が倍増しても、その効果は一時的なものとなるでしょう。
何故、医者が現場を離れて行ったのかを解決しないかぎり、新たに現場に派遣された者は、また去るのみとなります。

医療従事者の砕けてしまったモチベーションを取り戻させる策が必要です。

T.労働基準法の厳守

夜間病院で働いている医師は、時間外手当てをもらっていません。
当直料という手当をもらっていますが、実労時間で割ったら、その時給は夜間営業の飲食店の従業員と変わりありません。
「当直」というのは、本来、緊急時の為に待機している状態のことを言い、当直料で継続的な労働をさせることは違法で、
それを裏書きする判決も出ています。
公立病院の医師の給与を上げる必要はありません。
本来当然もらえるべき時間外手当を法で定められたとおりに支払うだけでいいのです。
それで、出費がかさみ病院経営がなりたたないなら、それは厚労省が決めた診療報酬が間違えであって、厚労省は普通に診療を行って経営が成り立つように診療報酬を改定すべきなだけです。


II.刑事免責
故意あるいは過度の怠慢によってもたらされた結果以外に、刑事責任を追及することは止めるべきです。
善意に基づいた行為の結果に対して、罪を追求することは海外ではありません。
グッド・サマリタン・ロー
」という観念があるからです。
なぜ、医療従事者だけ特別なのだという意見を聞きます。
新聞でも、誤報を流し、その結果が重大な事態を招いたら法的責任をとわれる、医者だけが特別な理由はと,問われた ことがあります。
理由は簡単です、それは医者個人のためではなく、社会全体の利益になるからです。
また、同じように多くの人の命を預かるパイロットの場合と比べてみましょう。
嵐が近づく荒天の場合、パイロットは飛ばないという選択肢を選べます。
医者は時にリスクを覚悟で手術をしなければいけない場合に遭遇します。
やらないという選択肢が患者の確実な死につながる時、一か八かはあります。
そういう状況に遭った医師が、躊躇するようなことがあってはならないように、刑事免責は不可欠です。


V.無過失賠償制

医療は不確実なものです。また人の体は自然の産物でやはり不確実なものです。
どんな簡単な手技でも、事故はあります。
採血しただけで、神経が損傷することもあります。
そういう不幸な結果は過失の有無に関係なく補償する制度を確立すべきです。
ヨーロッパには、医療行為に対して全面的な無過失補償制を採用している国々があります。
そういう制度の国では医療訴訟はありません。
アメリカ型の訴訟による補償より、この制度は優れていると思わずにはいられません。
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