まず、無過失補償制度とは何でしょう?


医療事故で障害を負った場合、医師に過失がなくても、患者に補償金が支払われる制度。
長期の訴訟を避け、医師・患者双方の救済を図るのが目的で、日本医師会は06年8月、分娩(ぶんべん)による脳性まひを「最も緊急度の高い事例」と位置づけ独自の制度案を公表、公的資金の投入を唱えた。
北欧やニュージーランドでは社会補償制度の一環として取り入れられている。

私は、日本にこの制度が存在しないことから起きる、医療側と患者側双方に苦しみを強いる争いを、崩壊していく医療現場を題材にした小説「
産声が消えていく」の中に描きました。

そして次に、上の日本医師会の提言後の同年11月の新聞記事を引用します。

分娩事故救済へ新機構 医師無過失でも患者に補償金 政府・与党案

(2006年11月25日西日本新聞掲載)

 ●訴訟経ずに数千万円 原因分析情報公開 産科医リスク軽減も
分娩(ぶんべん)事故で障害児が生まれた場合、医師の過失がなくても患者に補償金を支払う「無過失補償制度」について、政府・与党が検討している制度案の全容が24日、明らかになった。「運営機構」(仮称)を新設し、医療機関が機構を通じて民間の保険に任意で加入。
事故が起きた場合は、機構が審査し、給付対象なら1件数千万円を補償、原因分析や情報公開もする。
産科医不足の一因とされる訴訟リスクを軽減、患者を迅速に救済することが狙い。国も少子化対策に資するとして制度を財政支援する。
月内に開かれる自民党検討会で了承を取り付け、早ければ来秋の補正予算に必要経費を盛り込みたい考え。
補償の対象は通常の分娩で脳性まひになり、障害1?2級と診断された赤ちゃんで、先天性の障害や未熟児は対象外。
保険料負担に伴い分娩費の上昇が予想されるため、健康保険から妊産婦に支給される出産育児一時金(子ども1人当たり35万円)を数万円増額し、妊産婦に負担が及ばないようにする。
一時金の増額分は、国が健康保険組合に対し財政支援する方針。国は機構の運営事務費も支援する。
補償金が支払われた場合でも、患者が医療機関などに損害賠償を求める権利を認めるが、訴訟などで賠償金を受け取った場合は補償金返還を求める案も浮上している。
運営機構は事故の再発防止のため原因について情報公開するほか、過失があれば、医師賠償責任保険(医賠責)などに補償を求める。
将来的には分娩を手掛ける全医療機関が強制加入するための法整備も検討する。
日本医師会の推計では、分娩にかかわる重度の脳性まひ患者は分娩100万件に対し、年間約250人。
医療事故では、医師に過失があれば医賠責で補償されるが、分娩事故では原因がはっきりしないケースが多い。
2004年の医師1000人当たりの訴訟件数は産婦人科が11.8件(最高裁調べ)と最多で、産婦人科医のなり手が少ない一因となっているとの指摘がある。

私は、産科に限らずすべての医療行為に対して、無過失補償制度は必要だと思っています。
アメリカのように、医療行為によって生じた不利益をすべて訴訟の対象にするのは、わが国には馴染まないやり方だと思います
北欧の社会保障制度がベストだと思いませんが、その制度と考え方は優れたものだと感じます。

そして、いよいよ09年1月1日から、脳性麻痺児を対象とした「無過失補償制度」が始まります。

 しかし、残念な事にこの制度は、私や多くの医療関係者が望んでいたものとはほど遠い,もの。
「無いほうがまだましだ」とさえ言われる代物になってしまっています。

 多くの問題点が指摘されていますが、ここでは私が特に問題だと思っている所を述べていきたいと思います。


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私は、現行のままの「無過失補償制度」反対です。